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24．海と梅
南部町。そこには広大な太平洋という名の海があった。またここが日本一の産地といわれる薫り高き紀州梅もあった。それだけだ。
だが、それしかないからこそ、そこを目指すのだ。それはラーメン店を目指すのとかわらない。あれもこれもあるのは都会だけでいい。ホンモノの海と梅がある。それだけで素敵だ。
紀州梅干館へ行った。歌手の坂本冬美さんがデビュー前に勤めていたそうである。日曜なので工場は休みだった。見学コースがあっただけにちょっと残念。しかし梅を買いに来たのだから、そっちを真剣に選ぼう。
実は俺は子どもの頃から梅干小僧だった。実家で漬けていた梅干を毎日食べていた。和歌山で欲しかったのは、その頃のような本当にしょっぱい梅干だった。
紀州梅干館には売店（梅翁園）があり、そこでいろんな梅を売っていた。そのなかに「むく」と名づけられた昔ながらの製法で作った梅干があった。試食すると明らかにスーパーの梅とは異なるしょっぱさだ。自宅で漬けていたのとも違うのだが、しかしこの「むく」は気に入った。
塩分控えめでヘルシーな生活が流行りだが、それはトータルバランスなのであって梅干はしょっぱくていいのである。もちろんここでもはちみつを加えた梅を売ってはいるが、俺の眼中にはない。
「梅うめ〜クラブ」というふざけた名前のクラブにも思わず入会した。ダジャレは冴えないが、梅はホンモノだ。梅翁園の梅が通信販売で安く買えるらしい。うれしいクラブである。紀州梅のある生活のはじまりはじまり！
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