人生はイラクである。　布施韻（ふせいん）

　　そりゃオイラだって昔はヤンチャもしたさ。いまだって聖人君主かって聞かれれば、胸を張って威張れるような人間じゃない。世間様に言わせりゃよ、早い話が盗人のチンピラよ。だけどよぉ、人にはそれぞれ生きる道ってもんがあんのよ。外しちゃなんねえ道がよ。わかるかい。

　あんさんのお国にゃ「盗人にも五分の魂」って言葉があるんだってね。知ってるよ。こう見えても通なんだよ。いい言葉じゃねぇか。泥棒するのは仕方がない。けどよ、最後の一線は越えちゃなんねぇって戒めよ。それが人の道ってもんだ。そうだろ。そうなんだよ。だからよ、世間様もオイラ達しがねぇ盗人によ、ちったぁ情けかけてもバチは当たんねぇよ。「情けは人の為ならず」だよ。すごいだろ。知ってんだよ。情けはかけた自分のためなんだってよぉ、昔のあんさんの国の人は偉いこというねぇ。

　それがよ、わかってない野郎がおるんだわ。もう口にするのも忌々しいっ。オノレはよぉ、金持ちのボンボンでよ、何かあったら「パパ、パパ」っつってよ、へへ、いっつもパパに助けてもらってよ、威勢ばっかりいいんだよ。

　ナントカとハサミは使いようっていうけどよ、え、知ってるよ、すごいだろ。使い方しらねえ大馬鹿野郎がハサミどころかバズーカぶっ放そうつったらどうするよ。盗人の情けもなーんもわからん野郎だからよぉ、こりゃおったまげるわな。それもよぉ、テメエをいじめた人間をオイラがかくまってやってるなんて言いがかりつけて来てよ、オイラにバズーカ向けてんのよ。オイラ「寝耳に水」ってやつよ。へへっ、まだまだ知ってるぜ。そりゃたまったモンじゃねえだろ。

　オイラ知らねぇからよ、知らねぇのは諺じゃねぇぞ！癪だけど野郎の子分をウチへ呼んでよ、全部見せてやったらよ、いじめっ子の話なんかどっかいっちまってよ、なんか武器隠してそうだから許せんなんて言いだしてよ、とんだ言いがかりよ。「瓢箪から駒」よ。え、それは違う？そうなの。

　まあええよ。そんでいまどうするか悩んでるんよ。あんさん手ぇ貸してつかぁさいな。あの馬鹿野郎に「短気は損気」って教えてやってくれよ。ん、なに、寄らば大樹の陰？焼け石に水？骨折り損のくたびれもうけ？身から出た錆？なんですのそれ！？さっすが、あんさん、オイラの知らねぇことよくご存知だ。いいねぇ。気が合うねぇ。ますます気に入った。これで「鬼に金棒」や。やったるぜぃ！ ◆