東京ベイ、十八歳。　そうる勇樹（そうるゆうき）

疾走するこの都市から　振り落とされないように
必死にしがみつき生きていた　あの頃の俺たち


車を飛ばした東京ベイには　そんな気持ちのままの
いくつもの俺たちの影が　今もかわらず残っているようだ


　　戻らない日々を　悔やむのはよそう
　　時のしじまに　置いてきた哀しみに


　　おまえひとり　幸せにできなかった
　　東京ベイ、十八歳
　　今日も同じ夕日を背中に


渇望するこの都市まで　何も持たず飛び出してきた
夢も欲望もすべて飲み込まれそうな　渦の中の俺たち


街灯流れる東京ベイには　出口が見えないままに
行き場をなくした俺たちの闇が　いつまでもどこまでも続いているようだ


　　戻らない日々を　悔やむのはよそう
　　時のしじまに　置いてきた哀しみに


　　おまえひとり　幸せにできなかった
　　東京ベイ、十八歳
　　今日も同じ夕日を背中に

東京。実態のない言葉。いや、どんな実体も当てはまってしまう。それが東京。
　歌謡曲というキーワードが浮かんだ。歌謡曲の東京。だが歌謡曲の分析はしない。それで東京は描けない。自分で歌謡曲東京を作ろう。そう思った。
　俺は東京に住んだことがない。上京して神奈川と埼玉に住み、この先東京に住むことはないだろう。だが東京で遊び、東京で働いている。
　東京。通り過ぎる街。莫大な情報ターミナル都市。いつまでも徘徊できる。だが留まることはできない。帰る場所はそこにはない。それが東京。堂堂巡りの大都会。居心地？・・・そう、悪くない。◆